小牧宏文
- ジストロフィン遺伝子変異による小児期発症の筋ジストロフィーの代表的疾患
- ジストロフィノパチーと総称
- 診断当初からの継続的かつ包括的診療が重要
ジストロフィン遺伝子変異による筋ジストロフィー
※X連鎖劣性遺伝形式をとり原則男児に発症
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD):ジストロフィン蛋白の欠損。
- ベッカー型筋ジストロフィー(Becker muscular dystrophy: BMD):蛋白のサイズや量の減少。
※ジストロフィン蛋白レベルの異常は筋組織を用いたジストロフィン免疫染色で評価する。
- ジストロフィン遺伝子変異の種類はエクソン単位の欠失が約60%、重複が10%、30%が点変異などの微細な変異。
※全エクソンの欠失・重複が判定できるMLPA(Multiplex Ligation Probe Amplification)法を用いることで、約70%の患者が保険適用の遺伝子診断が可能。
※DMDとBMDの違いはframeshift仮説で多くは説明可能。エクソン単位の欠失・重複の合計塩基数が3の倍数かどうか、 DMDの場合には3の倍数でない(out-of-frame)、BMDの場合には3の倍数となる(in-frame)。
- 臨床的に本疾患が疑われた場合には、筋ジストロフィーの診療に熟知した医師により確定診断を行うとともに、 本人・家族に対する心理的ケア、遺伝相談について配慮する。
- DMD
- 2歳頃に下腿の肥大、3〜5歳に転びやすい、走れないことで発症。
- 別の目的で行った採血で偶然に高CK血症が見つかり発症前診断に至る例も多い。
- 5歳頃に運動能力のピークをむかえ、以後緩除に症状が進行し10歳頃に車椅子生活となる。
- 車椅子生活になってから数年で側わんの出現、進行をみとめることが多い。
- 通常10歳以降に呼吸不全、心筋症を認めるようになるが、個人差が大きい。
- 根本的治療はないが、後述する治療、ケアを包括的に行っていくことにより、10歳代であった生命予後が30歳を超えるまでになっている。
- BMD
- 症状はDMDのそれに類似するが、発症時期や進行がより遅く、歩行不能時期は少なくとも15歳以降。
- DMDと鑑別が困難であるような早期発症例から、成人後期発症の場合まで重症度に幅がある。
- 多くの例で下腿に仮性肥大を認め、鑑別診断の手がかりになる。
- 下腿腓腹筋付近の筋痛を認めることが多く、日常生活に影響を及ぼすこともある。
- 歩行可能な時期に心不全を発症することがあり、中学生以降で心機能の定期的評価が必要。